いきなり小難しい話で恐縮だが、いったん契約を結んだら、その内容を一方の当事者だけが勝手に変更することはできない。例えば、私がアパートを借りるとする。当然、家賃を大家さんとの間で決める。ところが、周りの人にいろいろ聞いてみると、どうもこの家賃は相場に比べて高いことがわかった。だったら、相場どおりの賃料にしてしまっていいだろう。ということで、私が勝手に相場どおりの賃料を決めてしまい、元の賃料に比べて安い金額の賃料しか支払わないと通告する。
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この場合、大家さんは差額を払えと言えないだろうか?また、私が三ヶ月契約で新聞を購読したとする。しかし、読み始めてみたら、どうもこの新聞は面白くない。インクが手ににじむばかりで、役立つ内容が書かれていない。そこで、私は一ヶ月たったところで新聞店に電話する。「どうもオタクの新聞は面白くないよ。もう読まないから明日から入れなくていいよ。お金は今月分だけ払うから」と告げる。これに対して新聞店は「ああ、そうでしたか。すいません。ではそうさせていただきます」と言うしかないのか?もちろん、いずれの場合でも私の申し出は通らない。前者の例では、いったん合意した賃料は、相場がどうであろうと約束した金額を支払わなければいけない。だから、大家さんは差額を私に請求できる。後者の例では、三ヶ月と期間を定めて約束した以上、この期間については、お互いの義務は果たさなければいけない。新聞店は、私に新聞を三ヶ月届けなければならないし、私は新聞店に新聞代を三ヶ月分支払わなければならない。だから、新聞店としては「笹山さん、それは困ります。いったんお約束していただいたのですから、うちとしては三ヶ月はお配りしますので、代金はお支払いいただくことになります。もし配らなくてもいいというのであれば配りませんが、それでも三ヶ月分の新聞代は頂戴します」と言えばよいことになる。当たり前の話だが、これが契約というものだ。契約とは、約束である。市民社会において、二者間で、これをしましようねとか、こういう権利がありますよということを双方が合意の上で決定する。そのようにして決められた約束は守られなければならない。守られてこそ、市場の取引というものが円滑に進行する。